脳体力トレーナーCogEvo活用のきっかけ
加齢や疾病による利用者様の身体機能の状態は、目で見て触って観察することで状態把握しやすいのですが、認知機能については、状態を把握したり変化を確認することが容易にはできませんでした。
脳体力トレーナーCogEvoは5つの認知機能を客観的に数値化することができます。認知機能別の結果をみて利用者様自身が何に気を付けて生活改善すればいいのか、行動変容の意識づけになると思いました。
当施設ではスタッフ全員が毎日自分の認知機能を脳体力トレーナーCogEvoで確認し、認知機能の理解を深めています。又、脳体力トレーナーCogEvo担当を決めており、実施するときには、「必要な基本姿勢(上図参照)」を心がけて行っています。
地域高齢者向けの早期認知症予防サロン
認知機能と生活の関係の意識づけ
地域密着型デイサービスを運営しており、地域の方々にも貢献したく、早期認知症予防の取り組みとして月に1回早期認知症予防サロンを開催しています。はじめての方には、不安を取り除くために笑顔で楽しくできる雰囲気づくりを心がけています。そして、認知機能は日常生活を送るうえで大切なことだと気づいていただきたいので、脳体力トレーナーCogEvoに取り組む前に、お料理をする際に使われている認知機能を例えて「【空間認識力とは】お料理するときに美味しく見えるように盛り付けを工夫しますよね。・・」というようなわかりやすい説明を行っています。取り組んでいる間も、タッチのタイミングやスムーズにできるか、などを観察して、いつものご様子と違う場合には、日常生活で変化があったこと(睡眠、疲労、ストレス、身体状況、身内の状況など)等を質問し、原因を一緒に考え、ご本人自らの気づきをサポートしています。「もっとちゃんと睡眠をとらないとけない」のように自主的に生活バランスを整えることに繋げていけるようにしています。
又、当施設ではお部屋にアロマの香りを立たせて、集中力アップ、気分をリフレッシュし脳神経の活性化を促し、アロマ効果で「においを」感じる嗅神経とともに記憶をつかさどる海馬にもアプローチしています。
生活改善につながる結果のフィードバック
脳体力トレーナーCogEvoを実施した後は個々の結果を印刷して渡し、皆さんでお茶を飲みながら毎回結果の見方を説明しています。前回の結果と見比べていただきながら、様々な低下リスクによる注意点を伝えています。五角形の形(バランス)を見てご自身で考えていただくことを重要視しています。
利用者様からは、このサロンに参加されることで、これ以上認知機能の低下が起きないように、自立した生活につとめようとする様子がうかがえます。サロンから帰るときも、万歩計を見て「今日は歩いていないので遠回りして帰る」と話す利用者様もいます。ここでのプログラムには、脳体力トレーナーCogEvoを紙で取り組むことができる「脳体力トレーナーCogEvoプリント」も作成し取り入れています。又自宅でできるような簡単な運動や手先を使ったクラフト作りなども行っています。
脳体力トレーナーCogEvoによる生活の質の変化
脳梗塞後に認知機能リハビリを目的に当サロンに来所した利用者Aさんの事例
Aさんはもともと社交的な方でいつも笑顔を振りまいていたのが、退院後に鬱っぽくなり、表情も乏しく話しかけても反応がない様子だったそうです。その後サロンに通うようになり、脳体力トレーナーCogEvoを含むプログラムに参加することで、認知機能の五角形の面積が少しずつ大きくなり、半年経た頃には以前のように明るくなって生活の質が戻ったと娘さんが話されていました。
アルツハイマー病と診断されている利用者Bさんの事例
Bさんは失見当識があり、脳体力トレーナーCogEvoの「見当識」のタスクが回答できないことをご本人も自覚していました。ご本人が少しでも困ることがないように、ご家族にはデジタル腕時計を日頃からBさんに身に着けていただくようにお願いしていました。脳体力トレーナーCogEvoを実施するときには、必ず時計とカレンダーも用意しています。サロン参加時には必ず、現在の季節や月のイベントや時間などをお伝えしています。症状が改善することは難しくても、少しの支援で、腕時計やカレンダーで時間や季節を確認する習慣を身に着けていただくことにつながります。
職員の声
脳体力トレーナーCogEvoは健康意識が高い方ほど、有用なツールであると実感します。また、我々職員も個々の認知機能の特性を知ることで、その方を理解し、やさしい気持ちになることができます。
脳体力トレーナーCogEvoを通して、施設内では「相手への思いやり」が深まりました。又「できないこと」は自立支援し、「できること」は機能を維持するケアを心がけるきっかけにもなりました。